アーチ構造物は、古くから私達にとって慣れ親しんだ空間であり、安らぎとゆとりを与えてくれるフォルムとなっています。アーチの伝統を守り続けているヨーロッパの風土の中で、フランス・マティエール社によってモジュラーチは開発されました。 モジュラーチとは、モジュール(さまざまに配列できるように設計された基本単位構造物)とアーチを組み合わせた造語で、アーチ特有の形状と美しさと合理性を持つ、多分割式2ヒンジアーチカルバートの大型鉄筋コンクリート二次製品構造物です。道路・水路・鉄道・盛土部などの開削トンネルや本線トンネル・明り巻き部、ロックシェルター・スノーシェルターなどに適用することができます。 1994年にフランスより技術導入したこの工法は、日本の各種基準に適応するよう改良を加えると共に、本工法の設計方法・施工技術、耐震性能についても公的機関に委託研究を行い安全性の確証が得られています。 モジュラーチは、従来の現場打ちカルバートに代わって、プレキャスト部材を用いて大断面アーチカルバートを構築する工法として、「労働作業の省力化」「効率化」「現場における安全性の確保」「品質の確保」「耐久性の向上」「コスト縮減」「景観への配慮」などに対し十分寄与できる工法です。現在、施工実績は全世界で7,500件を超え、うち日本での施工実績は464件(施工延長23km)となっています。 |
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特長(要点)
モジュラーチは、一対のサイドウォール(側壁部材)を左右に向かい合わせて設置し、その間にボールト(頂版部材)を架設するプレハブ工法です。
サイドウォール内側下部の形状が異なるSPタイプとSTタイプを規格化しております。一対のサイドウォールと1枚のボールトおよびインバート(底版部材)で構成された4部材2ヒンジ構造の「インバートタイプ」とインバートを除き構成された3部材2ヒンジ構造の「フーチングタイプ」があります。
ボールトおよびサイドウォールは、交角90°の接線上で分割され、左右対称の同一箇所にあるピース間ジョイント(ヒンジ部)は、回転機能を有するリングジョイントの噛み合わせで、ボルト連結した構造です。縦断方向のリング間ジョイント(製品間接続部)はPC鋼材で連結されています。
モジュラーチの特長は次の通りです。
1.大断面の構造物が構築できます。
多分割式で軽量化を図っているため、大断面の構造物が構築できます。
2.合理的な分割方式です。
アーチ型構造物に加わる荷重によるモーメントが最も小さい箇所で分割する合理的な分割方式です。
3.施工が簡単で大幅な工事短縮が図れます。
サイドウォール(側壁部材)が自立する構造で、施工性、安全性に優れており、工期の大幅な短縮が図れます。
4.美しいトンネルが構築できます。
坑口形状は竹割り構造とすることができ、他工法と比較してゆとりのある美しい空間を得ることが可能です。
5.ジョイント部の止水性に優れています。
部材間のジョイント部は外側をシート防水とし、内面には弾性シーリングを施しているため、止水性に優れています。
6.耐震性に優れています。
(財)土木研究センターで実物大実験や各種シミュレーションを行っており、レベル2の地震時荷重に対しても部材や継手部の
安全性が確認されています。
製品・工事の写真
● 開削トンネル 明かり巻き/坑門工 |
【施主】日本道路公団徳島工事事務所 【施工年度】2000年 【工事名】四国横断道北唱谷トンネル 【サイズ】R=5600インバートタイプ 【延長】25m 【土被り】0.0~2.0m 【用途】坑門工 |
●開削トンネル 河川/水路 |
【施主】国土交通省山形河川国道事務所 【施工年度】2004年 【工事名】山形県知坂台道路改良工事 【サイズ】S145/V235SP-フーチングタイプ 【延長】155m 【土被り】1.9m 【用途】河川 |
● 道路トンネル アンダーパス/道路 |
【施主】北海道歌志内市役所 【施工年度】1996年 【工事名】かもい岳斜面取付道路新設工事 【サイズ】S52/V64ST-フーチングタイプ 【延長】33m 【土被り】4.3m 【用途】道路 |
● 鉄道 |
【施主】北九州建設局道路部自動車専用対策室 【施工年度】2007年 【工事名】折尾連立・筑豊線函渠築造工事(18-2) 【サイズ】S80/V52SP-インバートタイプ 【延長】196m 【土被り】3.0~5.0m 【用途】鉄道トンネル |
● 防護工 |
【施主】長野県伊那建設事務所 【施工年度】2002年 【工事名】長野県高遠町道路(国道)改良工事 【サイズ】S10/V7.5ST-フーチングタイプ 【延長】42m 【土被り】8.0m 【用途】鞘管防護工 |
その他
新都市社会技術融合創造研究会「景観性に優れたアーチカルバートを用いた盛土構造に関する研究」 プロジェクトにおいて、近畿地方整備局、京都大学、モジュラーチ工法協会が共同で研究を行いました。 (2007.1~2010.3) | |
平成19年9月27日 近畿地方整備局において「新技術活用評価会議」(座長は足立紀尚京都大学名誉教授)が開催され、優良技術として事後評価を受けました。(2008.3.17) | |